【自治体事例】小さな世界都市豊岡の大きな挑戦。学生向け起業家育成プログラム
Why/抱えていた課題と目的
~人口減少と地域活力の減少~
兵庫県豊岡市は、コウノトリと暮らす町・演劇のまちとして世界からも注目されている地域だ。
抱えていた課題は、故郷への愛着減少による若者の回帰率の低下 。それに伴う地域の担い手不足(リーダー不足)に大きな課題感を持っていた。市内に住む若者たちが、自分たちの住んでいる地域に対して「貧しい地方」という強いイメージを持っていることが要因の一つだ。2021年移住地域ランキング1位を獲得した豊岡市だったが、人口減少・担い手不足、そして人材育成の問題は山積みで、自治体だけでは限界があると感じていた。
そこでインビジョンの個人向けダシトレコンテンツをもとに、地域を牽引できるようなリーダーの育成と地元回帰のきっかけづくりを行うための育成事業「放課後起業クラブ」を実施。同時にドキュメンタリー映画も撮影することとなった。
Solution/実施した取り組み
カテゴリ:育成
実施期間:3カ年実施
1期目2021年12月~2022年3月13日
2期目2023年1月~3月
3期目2023年11月~12月
具体的な取り組み:
ダシトレ個人向け育成講座の実施/ドキュメンタリー映画の撮影と上映
ダシトレの個人向けコンテンツをもとにした地域リーダー育成事業「放課後起業クラブ」を豊岡の中高生、20代向けに実施した。放課後起業クラブは、働くかっこいい大人の人間力とビジネス力を浴びながら、自分の人生自分次第というマインドを身に着ける体験型のワークショップだ。
リアルな受講生の様子を出会いから最終日まで密着し、受講生自身の葛藤や成長を追ったドキュメンタリー映画も制作した。
実際の講座概要:
参加者:
・学校に行く意味を見出せず不登校になりアフリエイトでお金を稼ぐ中学生
・人見知りで全く人と話せない自分をなんとか変えたいと勇気を出して参加した高校生
・なんとなく将来に不安があるけどうまく言語化できない子 など
自ら志願して参加してくれた未来の地域リーダー候補の受講生たちは、参加動機も様々。
Befor→After/実際にどう変わったのか?
~不登校の受講生。講座最終日に「母さん、俺学校に行くよ」と決意~
「学校って将来お金稼ぐためのものでしょ?それなら学校で勉強しなくてもいいじゃんって思う 。」講座開講前に彼から出た言葉だ。学校に行く意味を見出せずに、自ら不登校を選択していた中学2年生のK君。講座を最後までやり遂げたK君の中で最終発表日の日に大きな変化が起きた。「母さん、俺学校に行くよ」と舞台でサプライズ宣言。その意志の固まった一言はみんなの心を動かした。
~受講生イチ人見知りな高校生、講座後自ら頼んで豊岡農家へ弟子入り~
人前で話すことすら難しかった高校生かっちゃん。毎講座、会場の玄関で立ちすくんでしまうほど人が怖かったかっちゃんは、最終日に堂々とプレゼンを披露。講座後には自分がずっとやりたかった農業へ挑戦。自ら頼んで豊岡の農家さんへ弟子入りし、自分の経験や実体験をもとにイベント登壇や企画をしアクティブに活動中。
~講座中に会社を卒業?!再出発した起業家ママ~
講座参加当初は会社員だったママさん。沖縄料理屋をいつかやりたいという想いがあったが中々踏み出せずにいたところで、思い切って講座に参加してくれた。そんなママはなんと講座中意思決定をし、会社員を卒業。本気の起業を決意した。卒業後すぐに沖縄コミュニティカフェを開業。持ち前の明るさと絶品沖縄そばで豊岡の人たちの心とお腹の拠り所となっている。
~元受講生とのつながり~
第一期目受講生だった20代の参加者Tくんは講座後豊岡で起業、インビジョンの事業もサポーターとしてエンディングムービーを作ってくれたり、講座のサポートをしてくれたりと頼れるパートナーとして今も関わってくれている。個人でも豊岡の若者や企業を巻き込みイベントや事業を仕掛けて幅広く活躍中だ。
これまでの講座を通して、受講生それぞれの成長とドラマがそこにはあった。
映画は講座終了後に完成、豊岡と東京の2か所で上映会を実施し、その後も兵庫の映画館や日本にとどまらず海外の映画祭にも出展し豊岡の取り組みは内外へと発信されている。
▶︎ドキュメンタリー映画はこちら
お客さまとのつながりエピソード
今回のプロジェクトを一緒に伴走してくれた豊岡市役所 環境経済部係長 佐古さん
~インビジョン宮田から見た佐古さん~
常に情報収集をしており、新しい他地域の取り組みを取り入れたりしていて、周りからも信頼されている。改革前夜で青い炎の持ち主!
~お付き合いのきっかけは?~
起業家育成や人材育成取り組みはたくさんある中で、佐古さんや同じ経済環境部の坂本部長は、常に情報収集をしていたそうです。でもどれもHOW TOばかり。本当に必要で大切な、志や内省の機会がないことに疑問を抱いていたのだそう。
そんな中ご縁があり、インビジョンは豊岡で働き方改革セミナーをさせていただくことになりました。
豊岡へ初上陸を果たし、セミナーで地域や人のおダシについて熱く語るインビジョンを初めて見た坂本部長は、インビジョンの「ビジネスと道徳どちらも触れることが大切」という考え方に共感してくださり、「是非インビジョンに、豊岡の子たちを任せたい」と今回の起業家教育事業を任せてもらえることになりました!
~印象に残っているエピソード~
佐古さんが沢山調整してくれたおかげもあり、放課後起業クラブに予算をつけてもらえる方向に。しかし「インビジョンさんに予算をつけるには、兵庫県庁の審査会を通過することが必要なんです。審査に自分は絡めないので、どう頑張っても関われるのはここまで。」と佐古さん。
5月の雨の日、審査会当日。インビジョン代表誠吾さんと事業責任者の大地さんは緊張の中兵庫県庁へ向かいました。すると、待合室に向かうと見覚えのある後ろ姿。佐古さんでした。タブーを破って豊岡から神戸へ、片道2時間半かけて、たった20分の審査会に駆けつけてくれたんです。
「佐古さん!」と声をかけた時、目を逸らしてなんでもないような感じで「おお、こんにちは。」って言ってた佐古さんの表情が今も思い浮かびます。
審査会の後、「では、いい結果を待ちましょう。おつかれっした」と豊岡へ2時間半かけて帰って行った佐古さん、本当に感謝しています。
最終的に、佐古さんの応援のおかげで、無事審査は合格でした。
そんな青い炎の担当者佐古さんはじめ、初めての試みだった放課後起業クラブを、「インビジョンの思想に共感したから」と実施への舵を取ってくださった坂本部長。そして関わってくださった沢山の豊岡市の方々に本当に感謝しています。豊岡での実施を通して、やはり活気あるいい地域・いいチームをつくるには、人の育成が本当に大事ということを改めて感じた機会でした。
豊岡は今までに3期にわたり個人向け講座を開催してきたが、1期目の卒業生が2期3期と今度は運営側にまわりプロジェクトのPMとして関わってくれたり、エンディングムービーを作成してくれたりと、卒業した後も積極的に豊岡とインビジョンの事業に関わり続けてくれている。
卒業生たちの豊岡での活躍と豊岡の今後の取り組みが楽しみだ。
今日も小さな世界都市豊岡の大きな挑戦は続いていく。
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