
「ソーシャルメディアで採用する」
「採用にも広報が求められる時代」
「採用では候補者体験が大事だ!」
などなど、様々なマーケティングの知見が採用に転用されてきました。
それらを総称して、採用マーケティングという言葉も比較的浸透してきたような気がします。(私だけでしょうか?)
そう考えると、マーケティングのトレンドを追っていくことで
今後の採用トレンドが何になるのか予測できそうな気がしませんか?(私だけでしょうか?ー2度目)
そんな中、改めて注目したいのがオムニチャネルというキーワードです。
オムニチャネルとは、消費者が実店舗・オンラインショップ・カタログ通販・SNS等のあらゆる接点で、メディアを活用して顧客と接点を作り、購入の経路を意識させずに販売促進につなげる戦略のことを指します。
DENTSU MACROMILL INSIGHTより引用
オムニチャネルを採用に活かすという発想自体は、パーソルさんのこちらの記事でもあるとおり、特別新しいものではありません。
ただ、チャネルの数が5年前に比べて増え続けており、オムニチャネルするにもある程度優先順位を決めて取り組む必要があります。また、ただ単に色々な手法で採用活動をすれば良いというものでもありませんよね。
そこで、この記事ではオムニチャネル採用を進める上でポイントになりそうな論点をまとめてみました。
目次
オムニチャネルリクルーティングって本当に必要ですか?
「実は、そんなに必要じゃありません。」
と言ってしまったら、この記事はそこで終了ですので、必要と言わざるを得ないんですけど、理由は大きく2つあります。

理由①仕事探しの方法の多様化
冒頭の採用マーケティングの他、オウンドメディアリクルーティング、Indeed、転職クチコミサイト、リファラル採用などなど・・・
様々な採用手法や採用メディアがありますよね。そうなると、
「リクナビに掲載すればOK」
「Indeedに掲載すればOK」
というわけにはいかず、自然とチャネルが増えていきます。
理由②求職者の価値観の多様化
コロナ禍による在宅・リモートワーク、副業・複業、フリーランスやギグワーク、ダイバーシティ、SDGs、LGBTなどなど・・・
求職者側の働き方やキャリア、仕事選びの基準も変わってきました。
そうなると、様々な求職者に対応するためにチャネルも増えていきます。
結論、これからの採用にはオムニチャネルが必要です!
まあ、言いたい事はわかったけど・・・

(予算や人員にも限りがあるし、これ以上チャネル増やすの無理…)
→わかります。でも無料でできる手法や効率化できるツールもあります!
(全ての求職者に合わせていたら採用業務がめちゃくちゃ大変…)
→求職者に合わせた方が採用効率が上がるケースも多いです!
(今のままでも、そこそこ上手く採用できているんだけどな…)
→今の手法、メディアが今後も同じ成果が期待できるとは限りません!
(うん、もう少し余裕が出てきてからまた考えてみようかな…)
→採用において、この先余裕が出ることはあるんでしょうか…
そうです。採用市場は、強制的にオムニチャネルせざるを得ない状況になってきているんですね。
もう観念してオムニチャネルリクルーティングしましょう!
オムニチャネルリクルーティングの5ステップ
では、しぶしぶオムニチャネルリクルーティングに取り組む覚悟を決めていただいたという前提で、具体的な進め方の手順を5ステップで紹介します。
STEP①目的を確認する

まずSTEPの1つ目として、オムニチャネルリクルーティングの目的を確認します。「WHYから始めよ!」ですね。
今までの採用の考え方では、
短期的な採用ニーズの充足だけが目的
採用ニーズが発生した時に求人を掲載
求人効果のありそうな媒体を選定する
基本的には求人原稿の形式で制作する
応募数が多く集まりそうな内容で掲載
広告費と応募、応募単価をメイン指標
といった感じなのかな~と感じています。
今後オムニチャネルリクルーティングに取り組むためには、
長期的に自社の採用資産を積み上げる
働く可能性のある人と常に接点を持つ
可能な限り数多くの媒体に掲載をする
あらゆる形式のコンテンツを用意する
自社の価値観に合った内容を発信する
採用率や入社後の戦力化・活躍が指標
こういったスタンスが重要となってくると考えています。
その上で最終的に、目指すのは…
求職者が見る可能性のある場所に自社情報が掲載されている状態

さらに、チャネルごとに様々な価値観を持つ方が応募してくるでしょうから
選考方法も含めてオムニチャネルな採用プロセスが構築されている状態
が理想と言えるかもしれません。
STEP②目標を決める
従来の採用数ですと、応募数・採用数が主要な目標だったかと思います。
もちろん、オムニチャネルリクルーティングでも応募数・採用数が重要な目標であることは変わりありませんが、他にも見るべき指標ががないか検討します。
オムニチャネルでの採用活動では、数だけでなく質を見ていただくと良いかもしれません。そして、質を見るためには、入社までのスピードに注目するとわかりやすかったりするのでオススメです。

たとえば・・・
平均募集期間:募集開始日~入社日までの期間
平均選考期間:応募~入社日までの期間
スカウト返信率:送信数に対する返信をくれた人の数
有効応募率:自社が求める人材からの応募数
歩留率:次の選考に進んだ人の割合
内定率:面接した人数に対する内定を出した人の割合
内定承諾率:内定を出した人数に対する入社した人の割合
早期退職率:入社した人数に対する1年以内に退職した人の割合 etc.
これらの指標をチャネルごとに比較して、採用の目標を決めましょう。
STEP③ターゲットを広くとらえる
チャネルを増やすということは、様々な価値観を持つ人からの応募が期待できます。まあ、それがオムニチャネルリクルーティングの目的のひとつでもありますし。
その時に、採用ターゲットの見直しも必要となります。例えばこちらの図、

今すぐ転職を考えている転職顕在層だけではなく、良いシゴトがあれば転職も検討したいという転職潜在層や、今は転職するつもりがない転職無関心層も視野に入れて発信する内容を決めていきます。
転職顕在層をメインとした求人媒体などのチャネルは、競合他社がひしめくレッドオーシャン。
「何か、良い媒体ない?」と質問されても、「そんなものはありません」とお答えせざるを得ませんし、仮にあったとしてもスグに他社にも見つかって、あっ!という間に飽和してしまうでしょう。
ということで、転職顕在層のレッドオーシャンで戦いながらも、潜在層や無関心層にいかにアプローチするか?という発想も持つようにしましょう。
STEP④自社の魅力を棚卸しする
採用ターゲットを広くとらえたら、その人たちに何を発信していくかを考えます。「何を発信するか?」「何が効果的なのか?」考え始めたらキリがありませんね。
そんな時に参考になるのが8つの魅力因子と呼ばれる、組織に対する誘因です。こちらを「自社の何を発信するか?」を考える際のヒントにしていただければと思います。

・理念、ビジョン
・戦略、目標
・事業、商品
・仕事、ミッション
・風土、慣行
・人材、人間関係
・施設、職場環境
・制度、待遇
この8つの魅力因子を初めて知ったのは、確かリクルートの研修だったと記憶していますが、わかりやすく整理されているので今でも活用しています。
この中で、具体的にどんなテーマで発信するか?は各社さんごとに特徴やらしさがあるでしょうから、ぜひこちらを参考に話し合ってみてください。
STEP⑤目的によりチャネルを使い分ける
オムニチャネルリクルーティングを考えるうえで、あらかじめチャネルごとに目的を決めておくと「どのチャネルをどのように活用するか?」という目安になります。
様々なチャネルを通じて自社の魅力を発信する、というのはある意味コンテンツマーケティングでもあります。ということで、コンテンツマーケティングにおいてどのようにチャネルを使い分ければ良いか、Smartinsight社のコンテンツマーケティングマップを参考にまとめてみました。

ENTERTAIN(楽しませる)
ENGAGE(動機づける)
EDUCATE(教える)
ENTRY(応募する)
という4つの目的に対して、どのチャネルが適しているか、考える際に参考にしていただければと思います。
STEP⑥仕事のストーリーを発信する
目的・目標が決まり、ターゲットと発信する内容、チャネルまで決まったら、あとは発信するだけです。
その際に、意識したいのは「仕事のストーリーを発信する」ということ。
今風に言えば、”ナラティブ”という言葉になるんでしょうか。
ストーリーは読む人にとって“疑似体験”の効果があります。脳は想像上で体験したことと、実際に体験したことを区別できない、という研究もあるそうなので、良いストーリーを発信できれば、読む人はあたかも会社のメンバーになったかのような気持ちになるということですね。

STEP④で自社の魅力要因を棚卸しする際に、それぞれの魅力要因が伝わるエピソードをストックしておき、必要なときに発信できるようにしておくと便利です。
オムニチャネルリクルーティングから採用ブランディングへ
このように様々なチャネルを通じて自社のストーリーを発信していく際に気をつけたいことが1つあります。
いや、本当はもっと色々あるんですけど、絶対に意識して欲しいことを1つだけお伝えします。
それは、チャネルと候補者との接点に”自社らしさ”が込められているか?
オムニチャネルリクルーティングを進めていくと、当然のことながら求職者は色々なチャネルで御社の発信を見ることになります。もし、Aというチャネルで見た発信と、Bという別のチャネルで見た発信で、打ち出し方が違っていたら…
(アレ?この会社って表面的に都合の良いことを言ってるだけなの?)
と、不信感を抱く可能性があります。

たとえ、チャネルや発信されている内容が違っていても、
(あっ!これはあの会社っぽいな)
と感じてもらえる”自社らしさ”が込められていれば、それらが積み重なって自社の採用ブランドがより強固なものになっていくでしょう。
せっかく多くのチャネルを通して発信するなら、短期的に採用の間口を広げるだけではなく、長期的に資産となるような取り組みにしていける方が良いですよね?
そんな事も意識しながら、オムニチャネルリクルーティングに取り組んでみてはいかがでしょうか?