ピープルアナリティクスのカギは「データ」にあり。導入メリットから具体的な活用法まで徹底解説

「ピープルアナリティクスって難しそうだけど、具体的にどんなことをするんだろう」
「自社で抱える人事課題が山積み。何とかしていきたい」

このように考える人事担当者や、経営者は多いのではないでしょうか。

経験や勘に頼らざるを得ない従来の人事施策からの脱却。そのために有効なのがピープルアナリティクスです。別名「HRアナリティクス」や「タレントアナリティクス」とも呼ばれ、社員や組織に関するさまざまなデータをまとめ、分析し、解決を試みる手法、考え方を指します。

今回は、ピープルアナリティクスで使われるデータや導入するメリット、企業に導入されている実際の事例などについて解説します。

この記事はこんな人にオススメです!
・ピープルアナリティクスについて詳しく知りたい人
・自社が求める人材を確保したい人事、採用担当の人
・よりよい組織作りをしていきたいと考えている経営者

ピープルアナリティクスとは社員・組織の分析

ピープルアナリティクス(People Analytics)は、社員や組織に関するデータを分析し、組織開発・生産性向上に活かす手法です。 2007年、Google社が人事部の名称を「ピープルオペレーション(People Operations)」に変更しました。ここから「ピープルアナリティクス」=「人事領域の分析」という言葉が生まれたと言われています。

ピープルアナリティクスの目的と重要性

ピープルアナリティクスの目的は、企業の利益と生産性の向上です。

労働人口の減少により、採用市場では売り手状態が続き人材の獲得競争が激化しています。優秀な人材を獲得・維持し、社員や組織のパフォーマンスを最大化していくことは、企業が競争力を維持・向上するために重要です。

そこで必要となる手法が「経験と勘」に頼らず、データを活用するピープルアナリティクスです。データによる定量的な裏付けがあるからこそ意思決定の精度が向上し、業務の効率化が可能になります。

「採用したはいいものの離職率が高い……」など、人事領域に関するさまざまな課題をデータに基づいて解決していくピープルアナリティクスは、自社の生産性と利益を向上させていくために必要不可欠と言えるでしょう。

活用するデータの種類

ピープルアナリティクスで用いられるデータは幅広く、以下のようなものがあります。

  • 性別・年齢・保有スキルなどの基本的なデータ
  • 面接の記録、適性検査、人事評価、アンケート結果、勤怠情報などの企業が収集できる人事データ
  • 会議室・オフィス設備・休憩室・複合機の利用状況などのオフィスデータ
  • 電話・メール・PCなど、ツールの利用状況などの業務データ
  • 会議室での滞在時間・外出先・外出時間などの行動データ

これらを含む様々なデータを収集し分析することで、組織課題の把握や解決に向けた最適な方法の特定し、スムーズな実行が可能になります。

例えば、現在社内で活躍している人材の面接時の質疑応答や、志望動機などから共通した回答をデータ化し傾向を見ることで、採用時に同じ共通項を持つ人材の採用に活用できるなどです。

実行するには3つのステップを踏む

ピープルアナリティクスにおいて必要なステップは以下の3つです。

  1. データの収集(収集のための仕組みづくりも含む)
  2. データの分析
  3. 分析結果を基に施策をたてる

詳しく見ていきましょう。

ステップ1.データの収集

まずはデータを集めるところから始めます。人事部門だけで集められるデータには限りがあるため、会社全体への協力を仰がなければないケースがほとんどです。

データの収集をする際に、以下も合わせて定めておくとスムーズに進められます。

  • データの保存場所
  • データを更新する頻度
  • データを更新する担当者

ステップ2.データの分析

収集したデータを、どの課題を解決するために使うのかの「目的」を設定したうえでデータを分析します。

目的の例はこちらです。

  • 入社後の自社と人材のミスマッチを減らすため、採用すべき人材要件や選考基準を再定義したい
  • 社員がパフォーマンスを最大限発揮できるような配属先決定をしたい
  • 離職率を下げるため、社員の満足度を上げたい

例えば、離職率を下げたいのであれば、過去に離職した社員の転職先や転職理由、離職率の推移などのデータを集めて分析します。

ステップ3.分析結果を基に施策をたてる

集めたデータを基に分析をし、目的を達成するために施策をたてます。例として、ステップ2で挙げた「社員がパフォーマンスを最大限発揮できるような配属先決定をしたい」場合で説明しましょう。

まず、部署ごとの活躍社員の特徴を年齢や性別などの基本データや、人事評価や適性検査などの人事データなど、さまざまな観点からデータ調査をします。そしてその調査から、「この部署で活躍している人材は、適性検査で共通した突出ポイントがある」という仮説を導きだしたとしましょう。

その仮説に対する施策は「配属先を決める際に適性検査を受けてもらう」ことです。希望や話し合いをすることは前提ですが、共通ポイントが多い人を異動候補にするようにしてみるでしょう。

この3つのステップを適切に実行すれば、採用・配置・キャリア形成・組織風土など、人事領域のさまざまなシーンでピープルアナリティクスを活用できます。

ただ、もちろんデータにすべてうまく反映されるとは限らないため、データを基に仮説・検証を行いつつも必ず社内でのコミュニケーションを怠らないようにしましょう。

ピープルアナリティクスを導入するメリット4つ

ピープルアナリティクスを導入するメリットは以下の4つです。

  1. あいまいな情報を数値として可視化することで認識を統一できる
  2. 意思決定精度の向上が期待できる
  3. 人事業務の効率化が図れる
  4. 社員の価値提供の向上が図れる

それぞれ見ていきましょう。

あいまいな情報を数値として可視化することで認識を統一できる

ピープルアナリティクスを導入することであいまいな情報を数値化し、個人の感覚に頼ることなく認識を統一できます。

例えば人材教育の現場において使用されるマニュアル。このマニュアルが、データを用いたものではなく、ほとんどが感覚的に作られたものだと適切だとは言えません。統一した認識や理解を持つためには、誰が見ても共通理解ができる数字などデータを活用することが必要です。

また、教育を受ける側も「このマニュアルに沿って学べば大丈夫」と納得感を持って学ぶことができるでしょう。

意思決定の精度の向上が期待できる

社員や組織に関するさまざまなデータを基に判断ができるようになるため、感覚的な判断に比べて意思決定の精度の向上に期待できます。

例えば従来までの意思決定が「この人はこの部門への異動がきっと適任だろう」であったのに対し、ピープルアナリティクスを導入すると「これらのデータからこの人の適任はこの部門である」といった判断ができます。データに基づいた判断であれば、個人の主観に基づいた判断を制限し、他の社員との間で意見の齟齬があった場合にも、無駄に議論を繰り広げる必要がなくなります。

人事業務の効率化が図れる

ピープルアナリティクスを導入すると、人事の業務を効率良くすることが可能です。なぜなら、社員の性格や専門性などの基本データや、会議室やPCの使用状況などのオフィスデータなどの情報を客観的に判断しやすい数値として可視化することで、各業務の判断スピードが早くなるからです。

例えば、人事業務の中で解決しなければならない課題に「残業時間を減らす」があったとします。その際に、業務時間内に業務を完了させている部署と残業時間が多い部署で比較したら、使用しているツールの数や会議回数などに大きく差があった、などの結果がデータから見えてきます。解決しなければならない課題に対して、データを活用することで解決策が出るまでのスピードを上げやすくなるでしょう。

人事に関するデータを数値化することで社内での認識がまとまりやすくなり、意思決定を素早く行いやすくなります。データに基づいた素早く正確な意思決定は、採用や教育、評価など煩雑な人事業務の効率化に貢献するでしょう。

社員の価値提供の向上が図れる

データに基づいた最適な人材配置が行われることで、社員が最大パフォーマンスを発揮できるようになり、会社に対し価値提供の向上を図ることが可能です。

希望しない部署や仕事内容だった場合、社員のモチベーションもパフォーマンスも下がってしまいます。しかし、ピープルアナリティクスを導入することで社員が実力を発揮できる環境で仕事ができるようになり、価値提供の向上を図れるようになります。社員にとってもメリットがあると言えるでしょう。

ピープルアナリティクスの運用には“データ”を活用できるかどうかが全て

ピープルアナリティクスを導入し、円滑に運用していくためには「データ」を上手く活用できるかどうかが肝です。

以下の3つに気を付けながら運用していきましょう。

  • 十分なデータ量が必要
  • 活用するには知見が必要
  • 管理も徹底しなければならない

十分なデータ量が必要

分析をするためには、データ量にも注意が必要です。あまりに少ないデータ量では、効果のある分析ができません。定期的に調査を行い、客観的に判断できるくらい十分な量で正確なデータを集めましょう。

活用するには知見が必要

集めたデータを活用するには、データ分析をする担当者にスキルと知見が求められます。ただ集められそうなデータを集めて、数字を眺めているだけで効果が出るものではないからです。

集める段階から「どのような手法で、どのようなデータを集めるのか」や、「何のためにデータを集めて分析をするのか」の目的を明確化するなど、分析者に知見が求められます。

データ分析の経験がある担当者がいない場合には、外部からデータサイエンティストを採用したり、データ分析の研修会を開いたりすることで、少しずつ知見がたまっていくでしょう。

管理も徹底しなければならない

データ管理がずさんにならないよう、徹底した管理が行われなければなりません。データが一か所にまとめられておらず、さまざまな場所に保存されている場合には、ピープルアナリティクスで使用するデータを整理して一元管理しましょう。

また、職場における人事データの取り扱いなので、社員によっては「監視されている感じがする」「プライバシーはどうなるのか」などさまざまな懸念が生まれてしまうことも。データの収集をする際は承諾制にして、社員に対して十分な説明をしたうえで同意をとりましょう。第三者に対してデータを譲渡する場合には、個人が特定されないように集計データのみを渡すなどの配慮が必要です。

ピープルアナリティクスの使い方3つのフェーズに合わせて具体例を紹介

ピープルアナリティクスの使い方について、3つのケースを想定した具体例をご紹介します。

  1. 自社に合った人材をどうやって採用するか
  2. 社員のキャリア形成について
  3. 組織作り

それぞれ見ていきましょう。

①自社に合った人材をどうやって採用するか

まずは採用フェーズ。 採用分野においてピープルアナリティクスの対象となるデータには以下のようなものがあります。 

  • 求人公開から採用までにかかる日数
  • 採用コスト
  • 選考通過率
  • 内定承諾率
  • 既存社員の前職や採用経路
  • 活躍社員の過去の選考書類
  • 活躍社員の面接時の質疑応答

例えば、現在活躍している社員にアンケート調査を依頼し、回答から共通点を探し出すことで同じ要素を持つ応募者を見つけられるでしょう。また、自社で求める人材に共通している考え方を抽出することもできます。これらのデータの分析から、入社する人の傾向を様々な観点から把握でき、結果として効率的な採用につながります。

②社員のキャリア形成はどうしよう…

社員の育成やキャリア形成のサポートも人事の仕事。 この分野でピープルアナリティクスの対象となるデータには、以下のようなものがあります。

  • 社員の昇格・昇給率
  • 育成やキャリア形成に関連した社内制度の利用率
  • 育成やサポートに対する社員の満足度

これらのデータからは、社員が自社で成長できているのか、成長するためのキャリアプランニングができているか、などを把握できます。 適切に分析すれば、新人研修の最適化や優秀な社員の行動特徴の特定、後継者候補のリストアップも可能になります。

③社員にとってよりよい組織づくりをしたい!

「社員が働くことを通じて得られる体験」を意味する「Employee Experience(EX)」。EXを高めるためにもピープルアナリティクスは役立ちます。

  • 社員の満足度、幸福度
  • 早期退職率
  • 離職率
  • 欠勤率

ピープルアナリティクスでこれらを可視化し課題を特定・解決できれば、EXが高まる。つまり社員にとってより良い組織づくりにつながります。

ピープルアナリティクスの導入企業事例

ピープルアナリティクスを導入している企業の事例を3つ紹介します。

企業例①コニカミノルタ株式会社

情報機器や医療用システム、プラネタリウムなど様々な事業を展開しているコニカミノルタ株式会社では、新卒採用にピープルアナリティクスを導入しています。2018年度から人事部内にピープルアナリティクスの専任組織を設置し、データサイエンティストを配置。適性検査やパフォーマンスデータの分析から求める人財タイプを可視化し、選考判断のスピード化や自体・取りこぼしの低下を実現させました。 

参考:https://www.hrpro.co.jp/series_detail.php?t_no=1686

企業例②株式会社日立製作所

世界有数の総合電機メーカーである株式会社日立製作所では、「個を生かすPeople Analytics」と称した取り組みを行っています。サーベイで得た個人の意識とさまざまな人事・行動データをかけ合わせ、最先端のAI・データ分析で社員一人ひとりの課題や強みを抽出。効果的かつ効率的に、より精度の高い人事施策の実行を可能にしています。 

参考:https://www.hrpro.co.jp/series_detail.php?t_no=1684

企業例③LINE株式会社

コミュニケーション領域に加えて電子書籍、決済など多様なサービスを展開しているLINE株式会社では、2017年より月に一度、組織風土や上司との人間関係、自己成長などの項目の簡単なアンケートの「従業員向けパルスサーベイ」と、入社のタイミングで一度受ける「人間関係の診断サーベイ」を導入し、組織の状態を可視化しています。これらを掛け合わせて運用することで、チームの変化を素早く認識し、課題の原因に対する仮説や改善策へのスムーズなアプローチに役立てています。

参考:https://seleck.cc/1239

ピープルアナリティクスとは組織強化の新たなフレーム

多くの企業で注目を集め、導入が進められているピープルアナリティクス。 組織課題に対して客観的で公平な意思決定を下せるピープルアナリティクスは、属人的な対応が求められがちな人事の新しい味方になりえるでしょう。

インビジョン株式会社でも、戦略人事チームがオリジナルの社内アンケートを作成し月ごとに実施、数値化することで社員個人の課題や、組織としての課題を見える化する取り組みを行っています。この取り組みもピープルアナリティクスの一つといえますね。

「ビジョンや理念の浸透率、チームビルディングのレベル、業務改善、イノベーション、インナーブランディング、人材育成、社員のモチベーションアップ…どこから手をつけたらいいか分からない…」

「会社が思うようにうまくいかない」

「もっとメンバーを成⻑させたい」

という場合には、HRハッカーの組織診断をご活用ください。⼈事の⽅が把握したい組織状態の項⽬を9つに厳選し、診断機能を搭載しています。社員の満足度は会社の成長にも直結します。

社員が適材適所に配置され、それぞれのパフォーマンスを最大化できるような組織作りをしていきたいとお考えであれば、以下のフォームよりぜひ一度お気軽にお問い合わせください。

さっちゃん

フリーランスのライター。
noteやSEO、メルマガ、企業アカウントの中の人など幅広い媒体、ジャンルで企画立案から執筆まで行う。地域おこし、SNSマーケティング、不動産をメインジャンルに執筆する。趣味はうまいビールを飲むこと。

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