
皆さん、こんにちは!
かれこれ求人票、求人広告をたくさん書いてきたライターのいおりです。
今回は、いつも話題になる「社会保険完備、よく求人に出てくるワードではあるけど、これは福利厚生と言えるのか問題」についてお届けします。
先に答えを言ってしまうと求職者の方が持っていると私は思います。賛否両論あるでしょう。
ただ、その前に社会保険の基礎知識や福利厚生を魅力的に書く方法などは人事、経営者の皆様が知っておいて損はありません。この記事に辿り着いたからには、何か一つでも多く採用に関して学んでいただければ幸いです。
この記事はこんな人にオススメです!
・求人原稿を書くために必要な福利厚生の知識がほしい
・求人原稿に福利厚生のことを書く際のポイントや注意点が知りたい
・具体的な書き方の例が知りたい
目次
そもそも社会保険とは?

よく耳にする「健康保険、厚生年金保険、介護保険」のことを総称して社会保険と言います。
健康保険
医療費の自己負担が3割、事業所が7割負担になります。個人事業主(フリーランス)や学生などは国民健康保険に加入しますが、基本的にはこれと同じ役割があります。
ただし、健康保険は企業や事業所と従業員(加入者)で保険料を折半で支払うのに対して、国民健康保険は加入者が全額負担します。ちなみに、この全額負担を避けたいが故に社会保険完備の求人に応募する求職者もいます。
健康保険の中にはほかにも、高額療養費制度(高額な手術、抗がん剤治療などの投薬治療を受けた場合、1ヶ月の医療費の自己負担限度額を超えた部分は国が負担する制度)、出産一時金、出産手当金(出産時に休職する際に従業員が申請するもの)、傷病手当金(怪我や病気、うつ病やうつ状態などの精神疾患で休職した際に従業員が申請するもの)などもあります。
出産手当金や傷病手当金は国民健康保険にはないため、万が一のリスクに備えて社会保険完備の求人を探す求職者の気持ちも分かりますね。
厚生年金保険
厚生年金保険は年金制度の一種です。国民年金とは別物で会社ごとに基金、団体に収めることで将来的に一定額の年金が支給される仕組みです。
自営業、会社員、公務員、専業主婦(主夫)の方も20歳以上~60歳未満であれば国民年金に加入されています。会社員や公務員の方など企業や公的機関で勤務している方は国民年金と併せて厚生年金に加入します。つまり、国民年金で支払ってきたお金と厚生年金で支払ってきたお金を年金で貰えるようになるのです。通称、上乗せ年金とも呼ばれています。
このほか老齢年金、障害年金、遺族年金もこれに含まれます。また、私立学校の教職員の方などは共済年金に加入しているケースもあります。
介護保険※40歳以上の方は全員加入
高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み、制度として導入されたものです。もし介護が必要になった際、認定レベルに応じてさまざまな介護サービスを受けられます。基本的には居宅系、施設系、地域系の3つの各サービスが1割負担で受けられます。
※近年では介護利用者の増加により、認定基準が厳しいようで、手続きにはケアマネージャーなど専門家のアドバイスが必須になっています。
雇用保険と社会保険は狭義では別物

広義では社会保険の中に労働保険(雇用保険と労災保険)があるイメージですが、厳密に言うと異なります。
雇用保険
失業した場合に、失業給付金やハローワークでの求職支援などが受けられる労働保険です。失業給付金のことを「失業保険」という方がほとんどですが、ハローワークで失業保険と言うと「雇用保険のことですね」と言われます。(実際、再就職手当の申請のときに言われました……笑)
ただ、この支援を受けられるようにするためには雇用保険の適用要件を満たした上で、加入手続きする必要があります。この手続きは事業主が行うので、従業員は加入の要否を確認するだけで問題はありません。
基本的には「労働者を一人でも雇っていれば、雇用保険の加入手続が必要」なので、雇用保険の加入手続きはほぼ100%されるでしょう。アルバイト・パートの方も一定の基準に該当すれば、雇用保険の加入手続きをしなければなりませんし、「従業員には雇用保険の加入手続きが完了したことを確実に把握させなければならない」という規定もあるからです。
ですが適用要件を満たしているのに未加入だと分かった場合は、従業員からの申請で過去に遡って加入できる場合もあります。給与明細に雇用保険のことが記載されていないと、従業員も心配になってしまうので必ず連絡しましょう。
労災保険(労災保険制度)
労働者の業務上の傷病に対して必要な保険給付をして被災労働者の社会復帰を促すための制度です。費用は原則、事業主の負担する保険料から成っています。
労災保険を使いそうな業種や業界は限られそうなイメージかもしれませんが、通勤中の怪我も、仕事中のストレスも、長時間労働も傷病と認定されれば労災保険は下ります。
つまり、業種の規模や種類は不問で、全ての事業所と労働者に適用されるため、こちらも全員が加入対象者になります。
ただ、雇用保険の中に労災保険が含まれていると誤認している方も多数いるので、基本的に何か怪我や病気をした際にしか話題に上がらないのが特徴です。
社会保険加入対象者は全員加入しなければならない

社会保険も雇用保険と同様、会社や従業員の希望云々は抜きにして、加入対象者は必ず加入しなければならないものです。
未加入だった場合、企業は社会保険料を管理している年金事務所(年金機構)から来所通知が届いたり、指導が入ったり、あまりに悪質だと企業に予告なく「強制立ち入り調査」が始まったり、最大2年分の社会保険料(未納分)が徴収されることもあります。
ちなみに私は、社会保険に未加入にされている期間を社長に指摘したら無理やり契約期間満了(実質解雇)にされたことがあります。
不当解雇でとてつもなくはらわたが煮えくり返り、退職後に年金事務所に実名で通報(匿名通報ができないため)して、会社に自分の社会保険料を正しく納めさせました。その後も年金事務所からは未納があったことでマークされているようです。
こうなりたくない企業様がほとんどだと思いますので、適切に社会保険料を納めましょうと、誰からも言われるでしょう。
ただ、会社の規模や人数、従業員の労働時間やシフト数、雇用形態によって社会保険の加入対象が異なる場合があります。確実に対象者かどうかを知りたい方は社会保険労務士(社労士)さんにご相談しましょう。間違って税理士さんに問い合わせてしまう方もいらっしゃいますが、必ず社労士さんに連絡しましょう。頻繁に人を採用する会社であれば社労士さんに顧問になっていただくと安心です。
もし社会保険に加入させようとすると従業員とトラブルになるかもしれない!といった心配事があれば、それも社労士さんにご相談しましょう。一緒に面談していただけるなど、歩み寄った解決策を教えてくださるはずです!
求人票に「社会保険完備」と書くと有利なのか?

では、序盤にお伝えしていた議題について、お話します。
結論、求職者の求人&労働リテラシーによって答えが変わるのでは?と思われます。
「社会保険完備」を求人に書いておくデメリットとメリット
まず社会保険完備と求人に書くデメリットからご紹介します。
- 働く気は満々でも、社会保険料で手取りが減ってしまうのがイヤな求職者から応募されにくい。面接で現金手渡しで給料を貰えないか交渉されるパターンも増える可能性がある。
- 社会保険完備くらいしか福利厚生欄に書かれていないと「加入して当然なのに…そのくらいしかアピールポイントが無いのか?」と求職者に思われてしまうこともある。
逆に、社会保険完備と書くメリットは以下の通りです。
- 書き忘れるくらいなら書いてある方が好印象。当然の義務を果たしているというPRにはなる
- 社会保険完備の会社で勤務したい求職者には良いPRになる
- 将来の年金よりも、目の前の手取りを増やしたいという切羽詰まった訳アリ求職者を求人の時点で避けられる
つまり、社会保険完備の記載があるからこそ応募が来るケースもあれば、無いからこそ応募が来るケースもあるというのが結論です。
どちらにも一長一短ありますが、基本的には求人広告の代理店に依頼したり、ハローワークで求人票を掲載する際は「社会保険完備」が記載されることが多いです。
大切なのは、求人票を正確に書くこと

ただ、ありとあらゆる求人を見てきた、労働リテラシーの高い歴戦の求職者もいます。現在、求人票作成代行も担当している私も、その一人です(笑)。
もう企業が人を選ぶ立場は終わりました。彼らの御眼鏡にかなう求人にしなければ、令和のこのご時世で応募は来ない、採用はできないでしょう。
ここからは求人票の間違った書き方を正すチェックポイントをお伝えします。
適当に求人を書いちゃダメ!よくある間違いと正しい書き方解説コーナー
私も多数の求人を拝見してきましたが、本当によくある凡ミス集を挙げました。皆様も貴社の求人票をご確認ください。
間違い例①雇用保険あり
雇用保険の加入条件は3つあります。
- 勤務開始時から最低31日間以上働いている、もしくはその見込みがあること
- 1週間あたり20時間以上勤務
- 学生ではないこと(例外あり)
上記に該当する方がほとんどかと思いますので、当然の義務すぎるのです。なので「雇用保険あり」は不自然に見えます。
間違い例②社会保険完備(雇用保険、健康保険、厚生年金)
上記でも解説しましたが、雇用保険と社会保険は狭義的には異なるので別々で書くのが厳密に言うと正解です。
ここまで間違いに気づく求職者っているんですか?と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、正直います(笑)。
- 社会保険労務士の勉強をしている、していた人
- 傷病手当金の申請をしたことがあり、会社を退職した後に国民健康保険か社会保険の任意継続手続きをするか調べたことがある人
- 社会保険に入っていなくて、妊娠や出産のタイミングで出産手当金の申請ができないことを知って後悔した人(私の知り合いの実話です)
などなど、求職者にも保険制度を知る、学ぶ機会があれば気づくケースがあります。ちょっとしたことが企業の印象を左右するので、事前に正しく求人を書けるようになりましょう。
正しい書き方例はコレ!
これをコピペ(コピーペースト)すれば基本的に問題はありません!お気軽にご参照ください。
=求人広告代理店の制作、ライターさんもよく使う表記例=
<福利厚生>
・雇用保険、労災保険
・社会保険完備(厚生年金、健康保険、介護保険)
出産手当金、傷病手当金
・定期健康診断
=====
その前に「もっと書くべき福利厚生」がある

ただ、上記のように社会保険完備を綺麗にまとめて書けたところで、悲しいことに求職者にはあまり響かない場合もあります。
それは「もっと他に書かれていてほしかった福利厚生ワードがあるから」という理由も含まれてると思われます。
仕事内容や研修内容、給与の詳細や先輩の声もみっちり書いているはずなのに、応募が来ない、良い人が面接に来てくれない、人が組織に定着しないという課題があれば、福利厚生面もしっかり書けているかを見直すべきだと私は思います。
たとえば、このような実績があれば追記してみましょう。
- 社割あり
- 社員食堂あり
- 喫煙スペースあり
- 年間休日120日以上
- 図書費用プレゼント
- 資格取得支援金あり
- 産休育休の復帰率●%
- 育休産休の取得実績あり
- 結婚祝い金や慶弔見舞金あり
- 自転車置き場あり、駐輪場あり
- 資格試験の受験料も会社負担(免除)
- 資格取得支援(試験対策で座学フォロー)あり
- リモートワーク手当:在宅ワーク中の電気代●%支給
- 予防接種の費用を一部会社が負担します
- 人間ドックの費用を一部会社が負担します
- 看護休暇、介護休暇の取得実績あり
コロナ感染者を自宅で看護する方もいるので企業側の配慮を最もPRできます - 有給休暇率100%
最低でも80%は無いと厳しいです - 交通費全額支給、ガソリン代全額支給、駐車場代全額支給
遠方から通勤する人が多いエリアであれば、全額支給が一番強いです
求人票の添削する際によくあるのは、就業規則に書かれている福利厚生を求人票には全く書いていないという凡ミスです。人事や経営者、採用担当者の方は就業規則で定めた素敵な福利厚生を抜け漏れなく確認しましょう。
ちなみに!ちょっとした小技をご紹介(笑)
そんなに福利厚生をたくさん書けないです!!という方には、比較的なテクニックもお伝えしましょう!実はオフィスの近くにあるものをメリットと思ってくれる求職者もいます。
【近所に郵便局、宅配便の集荷スポットがある】
大人気のフリマアプリで販売をしている方は出勤前、退勤後、休憩中に発送できるため
【近所にコンビニ、レストラン、スーパーがある】
お弁当持参派ではなく買う派には嬉しい(デリバリー希望者でも、早くごはんやおやつを持ってきてもらえる)。退勤後に買い物もできる
【駐車場あり(駐車場完備)、近所にガソリンスタンドがある】
車通勤、バイク通勤の方はよく気にするポイントだから。冬になると灯油を買えるスポットにもなる
このように、ちょっとしたことが誰かにとってはメリットになります。社内だけでなく、社外にあるメリットも探してみましょう!きっと新たな発見が出てくるのではないでしょうか?!
福利厚生の薄さでおダシ(唯一無二の個性、最強のアピールポイント)を消してはいけない!

以上です。この解説いかがでしたか。
インビジョンは企業のおダシ屋です。が、おダシで福利厚生の薄さをカバーするのは至難の業です。それには圧倒的に誰にも真似できない最強のおダシが必要だからです。
とはいえ、自力で求人を書こうにも自社の魅力を上手く言葉にできない方はインビジョンにご相談ください。