
人事に配属された人は「HRという言葉、よく耳にするけど人事部と何が違うの?」、「人事部にはじめて配属になったけど、具体的にどんな仕事をするのか分からなくて不安」など、考えるのではないでしょうか。
HRと聞くと、英語が出てきて難しそうで理解できるのか心配ですよね。
この記事では、そもそもHRってなに?というところから、HRと人事部の違いやHRの持つ役割、HRの業界領域について解説します。
この記事はこんな人にオススメです!
・HRという言葉の意味、業界について知りたい人
・人事部にはじめて配属された人
・転職活動中にHR業界に興味を持った人
目次
HRとは?

ここではHRと人事部の違い、HRの役割と目的など、HRの基本について見ていきましょう。
HRとはHuman Resources(人的資源)の略
HRは、Human Resources(人的資源)の頭文字をとったものです。いわゆる人材を指します。
企業を経営していくうえで大事な経営資源には「ヒト、モノ、カネ、情報」の4つが挙げられ、その「ヒト」の部分がHR領域といえます。ヒトがいてこそ情報が集まり、モノを作り出し、資源となる。企業の成長のためには、企業に合う人材や優秀な人材が必要です。そのため、人材は経営資源の中でも最も重要な資源といえるでしょう。
HRと人事部の違い
HRと人事部の違いは、その考え方にあります。
HRは、経営資源である人的リソースをどのように確保、配置、育成、管理していけば企業の成長に貢献できるかを包括的に考えます。人事部は、人事評価や労務管理、人材採用など管理的な機能を持つ業務、という考え方から定義されます。
日本では、「HR」と「人事部」を同じものとみなして解釈されることがよくありますが、厳密には違いがあるため注意が必要です。HRが人材にまつわる施策で企業を支えるのに対し、人事部は人材施策の中でも人材採用や勤怠管理、労務管理や給与計算などの事務的な業務で企業を支えるという意味合いを持ちます。つまり、HRが人事部の業務を内包するようなイメージです。
HRの役割と目的
HRの役割を一言でいうと、社員が最大限の成長ができるようサポートすることです。
人にまつわる施策全般に関わるため、HRの領域は幅広いです。
たとえば、
- 採用計画を立て、いま必要な人材の深堀りをし、その人材に響くような求人を掲載する
- 求職者と面接をし、入社を決定する
- 部署ごとに最適な人材を配置する
- 社員の育成研修をする
- 社員の能力評価をする
- 給与計算をする
- 労働時間・給料・休憩時間・休暇・退職時の扱いなどを定めた就業規則を作成する
などがあります。
仕事の範囲は幅広いですが、そのどれもが社員が働きやすい環境を整えることで個人の力を発揮しやすくなるように、正しく評価されるように行うものです。つまり、人の成長を支える形で、企業の成長を支えることがHRの仕事です。
「HR◯◯」よく使われる用語の意味とは

HR業界、HR部、HRテックなど、「HR〇〇」でよく使われる用語の意味を解説します。
HR業界
「HR業界」とは、HR系のサービスを提供する業界のことで、ヒトに関するサービスを提供している業界です。かなり幅広いですよね。
「HR業界」と似た言葉で「人材業界」という言葉があります。同じでは?と思いきや、「人材業界」と比較する形で「HR業界」について解説すると、それぞれ下記のような違いがあります。
- 「人材業界」=採用特化。(採用支援、人材派遣、人材紹介、人材広告、人材コンサルティングなど)
- 「HR業界」=もっと幅広く、ヒトに関連する全て。(採用はもちろん組織開発、育成、労務など)
人材業界は特に、派遣会社に登録している派遣社員を契約企業へ派遣する「人材派遣」と、エージェントが求職者に対して企業を紹介し、マッチングさせる「人材紹介」を中心としています。
イメージとしては、人材業界の焦点はあくまで人材であり、HR業界は組織という観点も含めながらの人材、といえるでしょう。
HR部(部署名)
「HR部」「HR◯◯部」といったように、部署名として使われる場合があります。「HR部」という場合、「人事部」と同じ意味で使われることが多いです。
ただ、完全にイコールではありません。
人事といえば、今まで管理や労務に限定された保守的な役割のイメージが作られてきましたが、「HR部」の場合はこのイメージとは違います。直訳するなら、ヒト(人材)に関するすべてを担う部署です。
経営戦略を理解しながら採用や組織開発、評価制度などを一気通貫で関わる”攻めの人事”的な意味合いが含まれている場合が多く、「HRソリューション部」「HRセールス部」などは、顧客のHR領域を手伝う部署といった意味合いを持ちます。
CHRO(役職)
CHROやHRコンサルタントなど、HRという言葉が役職の中に使われている場合もあります。
CHROとは、Chief Human Resource Officerの略で、「最高人事責任者」の意味です。言い換えるなら、企業におけるHR領域の長です。「人事部長」は、CHROとイコールではありません。人事部長は、人事業務の長。採用や組織開発、評価制度などの業務責任を持っています。
CHROはヒト・モノ・カネ・情報の経営資源を理解し、経営レベルで人事戦略を考えて実行する役職です。人事部長よりも高い視座や深い知見が必要であり、人事戦略と紐づく事業や利益に関する責任を持ちます。
HRテック
HR業界においてトレンドともいえるHRテックは、「HR」と「テクノロジー」が掛け合わされた造語です。HR領域のあらゆる課題をテクノロジーで解決するサービスのことをHRテックと表現します。
代表的なものとしては労務管理システムや採用管理システムなどです。たとえば、採用管理システムであれば、作成した求人を大手求人サイトへ自動的に掲載してくれたり、求人サイトの流入経路の確認や分析ができるレポート機能が搭載されていたりするシステムなどがあります。
今まで肌感覚で行っていた面も多い人事業務において、テクノロジーを活用することで数字で表すことができるようになり、効率化が図れるようになりました。
IT化が進む今日、どんどん新しいサービスが開発され、市場規模も大きくなり続けています。今後のHR業界を理解するには、HRテックに関する知見を深める必要があるといえるでしょう。
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HRの業務領域はどこまで?全部で9つあります

HRの業務領域について解説します。考え方によって切り分け方に違いはありますが、主に以下の9つに分けられるでしょう。
- 経営・人事戦略
- 採用
- 受け入れ
- 人材配置
- 能力開発
- 目標・評価制度
- 報酬制度
- 組織開発
- 労務管理
経営・人事戦略
ヒト、モノ、カネ、情報の経営資源を理解しながら人事戦略を立てる業務領域です。
事業計画や実際の利益に紐づく人的資源の分配や、組織を前進させるための長期的な計画など、企業全体を最適化するための戦略を描きます。
採用
HR領域の中でも代表的なのが採用領域です。
いつまでに何人、どのような人をどのように採用するか、どのような求人サイトに求人を掲載するかなどの採用計画から、自社サイトやコラム・SNS発信などの採用広報、選考〜内定決定までの領域を指します。
採用の領域の業務についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。
【採用初心者必見】採用業務の全体像と人事が意識すべき7つの力とは?
受け入れ
内定が決まった後の受け入れ業務です。オンボーディングとも言われます。内定通知や入社に必要な契約手続き、内定式や入社式、フォローアップなどを指します。
人材配置
組織状況や従業員の適材適所を考えて、個々の能力や適性を把握したうえで人材の配置を考える業務領域です。新しく採用した人の配置はもちろん、社内異動も含まれます。
企業が経営目標を達成するために、また、従業員が最大限のパフォーマンスを発揮するために重要な領域です。
能力開発
人材育成の領域です。講座形式で研修を行ったり、メンバーの側について指導したり、自ら学べる仕組みを用意したりして、従業員の能力を高めます。
人材育成の方向性は基本的には経営戦略に沿って決定されることが多いでしょう。たとえば、 「グローバル化を目指し語学力を向上させる」という経営戦略の場合、 従業員のグローバル化対応のために必要な研修を行います。
能力開発により人材の能力が向上することで、組織としても個人としても市場価値の向上につながります。
目標・評価制度
どのように目標を管理し、評価するかという仕組みを整える業務領域です。
さまざまな評価の手法がある中で、公平性や納得感を担保するにはどうすれば良いか考える必要があります。従業員が人事評価に不満を感じないよう、どのようなことが求められ、なにが評価につながっているポイントなのか、評価制度の仕組みを示すことが大切です。
報酬制度
目標・評価制度に紐づいた、給与や昇進・賞与の業務領域です。働く立場にたってみると、今年のボーナスが上がるかどうか、昇進できるかどうかなど、気になって仕方がない部分でもあります。
報酬には大きく「金銭的報酬」と「意味的報酬」があります。金銭的報酬はその名の通り、金銭面での報酬です。対して意味的報酬は、働く人の成長欲求を満たす環境づくりや、表彰などで承認欲求を満たす評価システムなどで行われます。このことから、金銭面だけでなく賞賛や表彰の仕組みも報酬制度に含まれるといえます。
組織開発
組織開発は、社員の会社へのエンゲージメントを高め、組織をより良いものにしていく業務領域です。組織が抱えている問題を表面化させ、解決策を当事者たちで考えて実行していくというプロセスが含まれます。
カルチャーの明文化や浸透、情報のオープン化や福利厚生を含めた労働環境の向上、チームワークの向上などを行います。
労務管理
勤怠や給与計算、個人情報管理や手続き、安全衛生管理などの労務領域です。いわゆる人事部の仕事ともいえる領域です。
労働基準法などの法律を理解する必要もあり、大企業や中小企業など会社の規模に関係なくどの企業にも必要不可欠な領域といえます。
HRに求められる能力は3つ

HRに求められている能力は以下の3つです。
- コミュニケーション能力
- 人事・労務の専門知識
- 経営者マインド
ひとつずつ見ていきましょう。
コミュニケーション能力
HRに求められている能力のひとつにコミュニケーション能力があります。
HRは自社の社員や役員、学生や中途採用応募者、転職エージェントなどの担当者など、立場や役割の異なる人と円滑なやりとりをする機会が多いです。そのため、コミュニケーション能力が必須といえるでしょう。
当然、コミュニケーション能力は職業や業種を問わず、仕事をするうえで必要とされる能力の中で重要度の高いものといえます。
ただ特にHR・人事は、採用から入社後のオンボーディング、ときには給与にかかわる評価や休職の相談など、一層センシティブなことにも対応する役割です。気遣いや寄り添い方など高いコミュニケーション能力が求められます。
また、会社や経営者の目指すところを把握し、人事戦略に落とし込む理解力もコミュニケーション能力に含まれます。立場の違う相手が何を求めているのか、何を考えているのかを真摯に聞くことが大切です。
人事・労務の専門知識
HRに求められる能力・知識には、人事・労務の知識があります。人材に関する専門家である社会保険労務士とまではいかずとも、さまざまな制度を知っていることで社内から信頼され、頼られやすくなります。
細かいところまでは知らなくても、たとえば、「傷病手当は誰が、どんなときに該当するのか」、「育休や産休はどうすれば取れるのか」などを聞かれたときに大まかなことは答えられなければならないでしょう。
そのためには常日頃から知らないことは調べる、調べてもわからなければ聞くなどして必要な知識を取り入れる習慣をつけておきましょう。
経営者マインド
経営者マインドは、HRに求められる能力の中でも特に重要です。先行きが不透明で不確実な現代における経営戦略の中で、人材戦略も欠かせないからです。
経済産業省が2019年に発表した「人材競争力強化のための9つの提言(案)~日本企業の経営競争力強化に向けて~」の中に、競争力の源泉は「人材」であり、人材戦略は経営戦略の中心に位置づけられることを、経営トップは再確認し、具体的なアクションに繋げていくことが求められるとあります。
経営上の課題と人材マネジメントの課題はリンクしているといっても過言ではなく、経営者のマインドを持つことでHR領域の課題も明確になりやすいでしょう。たとえば、テクノロジーの変化のスピードに対応していかなければならないという企業課題があった際、解決に導くためには、変化に対応するための従業員の再配置・再教育が必要です。
また、高齢化によって社会で活躍する期間が長期化し、個人のキャリア意識が向上しているなら、HR領域で自立したキャリア構築の支援を行うことで従業員の会社へのエンゲージメントが高まります。
「採用は経営のひとつ」と考える人事担当や経営者もいるほどです。どのポジションでどのような人を採用するか要件定義し、採用するかどうかは、規模が小さい会社ほど経営にダイレクトに響きます。経営者マインドはHR担当には欠かせない要素といえるでしょう。
今後HRに求められるもの

そんなHRには、今後以下の3つが求められると考えます。
- HRTech(HRテック)、デジタル化に強くなること
- 働き方のトレンドを知ること
- 経営者の視座を持つこと
詳しく解説します。
HRTech、デジタル化に強くなること
HRTech(HRテック)やデジタル化に強くなることが、ますます重要になるでしょう。
コロナによってリモートワークが普及し、その結果デジタル化が進みました。HR領域でもテクノロジーを活用することが当たり前になれば、活用できている企業とできていない企業で大きな差が生まれかねません。
人事の情報もアナログで管理、求人原稿もその都度作成するなどの非効率だった部分を、デジタル化によって効率化していかなければHRにとっての負担は増えるばかりです。
変化の大きな時代では、必要な組織能力の変化スピードもどんどん加速します。HRテックやデジタル化に強くなることで、加速する変化スピードについていきましょう。
働き方のトレンドを知ること
働き方のトレンドを知ることも今後HRにとって大切です。
現在、フリーランス、副業(複業)、ワーケーションなど、さまざまなスタイルの働き方が受け入れられるようになっています。自社にかかわる人材が、正社員や契約社員などにかかわらずフリーランスや副業をしている人などということもあるでしょう。トレンドを知ることで、自社にかかわって働く人材がどのような働き方をしているのかを知り、個人のスキルを最大限に発揮できるかかわり方は他にもないかなどを考える余白が生まれます。
今は存在しないような働き方が今後生まれるかもしれません。そんな現状に臨機応変に対応できるHRが求められます。
経営者の視座を持つこと
経営者と同じ高さの視座を持つことが、今後HRには求められます。
日本はこれからますますAIが発達し、人口が減って本格的な少子高齢社会へ突入していきます。これまで以上に人材の価値が高まり、どうヒトを活かすかを企業全体の状況も踏まえつつ考えていかなければなりません。
現代は、VUCA(ブーカ)時代といわれます。
V:(Volatility:変動性)
U:(Uncertainty:不確実性)
C:(Complexity:複雑性)
A:(Ambiguity:曖昧性)
これから先のことは不確実で不透明、将来の予測するのが難しいことを意味します。
このような時代には常日頃から情報にアンテナを張り、自社の経営戦略の実現に向けた人事戦略、人材マネジメントをやっていく必要があります。
お手本にしたいHR・人事の人たち

企業でHR・人事担当をしている方や採用支援事業を行う方など、人事の仕事をするにあたって見本にしたい方々のTwitterアカウントを紹介します。
発信を見ると、人事の仕事をするときに考えていることや気をつけるべきポイントが分かります。ぜひTwitterを覗いてみてください。
採用の王さん
HR領域の中でも特に採用に特化した発信を行う「採用の王」さん。3.3万フォロワー(2022年9月26日現在)
採用をする立場になったときに役立つ内容が満載。学生向けの発信もしているので、学生が就職活動を行うときにどのようなことに気をつけているのかなど、面接を受ける側の立場のこともよく分かるようになります。
▼Twitter:https://twitter.com/saiyoking
ジェイック 人事のくつわさん
人事部長をされている「ジェイック人事のくつわ」さん。1.3万フォロワー。(2022年9月26日現在)
人事業務を行ううえでのマインドセットや、事業のことをツイートされているので、いかにHR・人事業務が企業全体の事業に関係しているのかも実感できます。
▼Twitter:https://twitter.com/kutsuwa_jaic
インビジョン 石井さん
採用のプロであるインビジョン株式会社の石井雄太郎さん。8,300フォロワー。(2022年9月26日現在)
実際に多岐にわたる企業の採用支援を行っているため、現場のリアリティを感じられるツイートが多いです。頭の中で考えていることを発信されているので、「そんなことを考えながら仕事しているんだ」と気づきが多くあります。
▼Twitter:https://twitter.com/yutaro_ishii
▼石井さんがダシトレに執筆した代表的な記事
【2022年8月最新版】全国主要求人メディア月間ユーザー数ランキングベスト100! – ダシトレ
まとめ:HR領域は人の成長で企業を成長させるために重要
HRとは何を指すのか、どのような領域なのか、人事部との違いは何なのかなどについて解説しました。
HRは「人材にまつわる施策で企業を支える」のに対し、人事部は「人材施策の中でも人材採用や勤怠管理、労務管理や給与計算などの事務的な業務で企業を支える」という意味合いを持ちます。HRが人事部の業務を内包するようなイメージです。
また、HRの業務領域は人に関わること全般で幅広いです。その業務のすべてが、人の成長を支えることによって企業の成長を支えるためという目的のもと成り立ちます。
HR領域の中でも、「採用」についてもっと理解・イメージを深めたい方は、採用担当者向けの資料が無料でダウンロードできますので、見てみてください。
HR領域に関する知識は、ぜひダシトレブログで学んでみてください。