休職者とのかかわり方、メールのポイント【休職経験者が解説】

人事、経営者の皆様、また休職してしまった部下がいる上司、マネージャーの皆様
…突然ですが質問です。

従業員が休職したことはありますか?その対応をしたことがありますか?

勤務中、通勤中の事故による怪我で休職する人もいれば、うつ病や適応障害、パニック障害などの精神疾患で休職する人もいるでしょう。

「ウチは大手だしホワイト企業だから、休職なんて無縁ですよ」などと思っていたら、急に休職者が出て驚く人もいるのが現状です。世の中には予測できない不慮の事故やら、じわじわ蝕む心の病がたくさんあり、従業員も自身の体調不良を予測ができない、気づかないこともあり得ます。

今回は「休職者に遭遇したことがない!休職者対応をしたことがない!」という人事、経営者の皆様のために事前に知っておきたいマニュアルをいおりが作成しました。

私、こう見えて実は過労による「うつ状態」で休職経験があるんです(笑)

私自身の経験談(配慮してもらえて嬉しかったこと、逆に鬱陶しかったこと)も含めて、人事労務に携わる方が知っておいて損はないことをまとめました。ご参考になれば幸いです。

この記事はこんな人にオススメです!
・休職者に対する適切な対応方法が知りたい
・休職者側の気持ちや考え方を知っておきたい
・休職者が出ないようにするために気をつけておくことが知りたい

まずおさえておきたい!休職中の従業員とのかかわり方

最初に人事や労務、総務の方で、休職中の従業員を主に担当する人にとっては百も承知なことから解説していきます。中には意外にマークしていなくて失敗するケースもあるので、よく確認してください。

①休職中の連絡頻度、手段、連絡先、やり取りをする人を決める

私が経験したのは「2週間に1回、月曜日にマネージャーに体調や気分、復帰できそうかどうかなどの気持ちを素直にメールしてください」というルールでした。このように、いつ(何曜日)、誰に、何を、どんな手段で伝えるのかを決めて休職者とやりとりすると良いでしょう。

ただ、「休職者自身も連絡したくてもできない状況もある」ので無理強いはできない可能性もあります。その場合は適宜、配慮しましょう。

【テキストコミュニケーションが得意な人はメールで連絡、電話の方が良い人は電話で連絡してもらう
利き手が負傷しているので電話を推奨する、スマホを見ると心臓がバクバクするなら落ち着いた時にできるメールを推奨するなど
【連絡する約束の日に連絡がなかった場合は「また連絡できるときに連絡してくれたら良いですよ」などの気配り(連絡)をしておく
どうしてもしんどい、具合が悪い場合は代理で家族や友人が状況を連絡しても良い旨も伝える
【何を連絡すれば良いのか?と迷わないように「体調や気分、お医者さんに言われたことや生活上の悩みなどを打ち明けてください」と内容を大方きめておき、休職者に連絡する】

など、休職者とメインで話す担当者は決まり事や柔軟に対応する姿勢を見せると、休職者も安心してくれると思います。私もこの取り決めにはすごく救われましたし、おかげで当時、いろんなことをマネージャーに伝えられました。

  • 急に休職したことに罪悪感を感じている、自分が担当していた営業エリアに怖くて行けない(電車で通り過ぎるのもイヤで、駅に着くときは目をつぶっている状態だった)という本音を打ち明けた
  • うつに関する本や漫画を読んでて、自分に当てはまることと当てはまらないことがある旨を伝えた
  • 自分のストレス耐性、メンタルケアを振り返る内容を報告できた

これに対して、マネージャーも「今日も報告してくれてありがとう。会社のことは気にしなくて良いので、とことんゆっくりしてね。」といった、簡単な返信があるだけでした。既読スルーするよりも一言、二言くらい返してもらえるだけで嬉しかったのを覚えています。

私は結果的に復職せず、そのまま契約期間満了で退職、転職しましたが、がむしゃらに働きすぎて自分のことを見ていなかったことに反省しつつも、自己理解のための休職ができたことと、休ませてくれた会社には今も感謝しています。

休職者と面談しても良いのか?

メールやチャットでは顔色などが分からないので顔を見て話したい(面談したい)という人事や経営者の方のいらっしゃると思いますので、お答えします。休職者との面談実施は時と場合によって判断が異なります。

休職者が復職できそうなくらい回復している場合は面談しても良い場合があります。が、現在はコロナ禍であり、休職中の人が通勤してまでオフィスや事務所に出社させるのはあまり好ましくはありません。せめてオンライン面談を実施し、従業員の身の安全を守りながらお話ししましょう。

逆に、休職者がオンライン面談できる気力と体力と状況が無い場合は休職者と面談してはいけません。面談しても良いかどうかの判断は、休職者が主治医の診断書や意見書を提出(復職の意思表明)してきたかどうかで判断しても遅くありません。

もしも休職者から「連絡してこないで!」と言われたら?

  • 会社から連絡が来ると、仕事のことを思い出してさらに憂鬱になってしまう
  • 休んでいるのに連絡が来たら、上司から監視されている感があって休んだ気がしない

など、休職者から申し出がくることもあるようです。

会社としても休職者の様子を知る術なく、何も連絡(気にかけ)もせず、復職できそうな旨の診断書が来るまで待つのは、さすがに心配になると思います。

なので、この場合は敢えて1回、本人にこう連絡すると良いでしょう。たとえば…

  • 承知しました。でしたら、お医者さんともご相談の上、会社に連絡を取りたいお気持ちになったり、連絡しても体調が悪くなることはないくらい回復した際は、会社に連絡していただければ幸いです。
  • 大変恐れ入りますが、休職中に全く連絡がつかないとなるのはとても心配です。休職中のところ恐縮ですが、休職者の回復経過を把握するために連絡しようと考えておりますので、ご理解いただけますと幸いです。
  • お気持ちは重々承知しておりますが、就業規則に「私傷病休職中、社員は会社の求めに応じて、病状等について定期的に報告しなければならない。」という記載もあるので、できればご対応いただければと存じます。

このように連絡すると、必要最低限の連絡なら気分が向いた時にしようかな?と改めてくれることもあります。それでも頑なに連絡を拒む場合は産業医に相談するか、休職者のご家族に連絡を取ってみるのも良いでしょう。

②傷病手当金の申請フローを伝える

社会保険(健康保険)で傷病手当金の申請ができる旨を伝えるのは人事の方もご存知かと思いますが、休職者に分かりやすく申請の流れを伝えて実践させるまでが傷病手当金だと思って根気強くフォローしましょう。

というのも、すんなり申請してくれないケースも想定できるからです。

たとえば「休職者自身が休職することを受け入れたくない、故に病院に行きたがらない」ということもあり得ます。休職するのにしぶしぶ通院して診断書を貰う人も中にはいます(従業員の家族が心配になって無理やり病院に行ったら、やはり精神疾患だったというときに多いです)。

他にも「体調がしんどすぎて書類を書く気にならない、通院できなかった」「記載しないといけない項目が多すぎて、やる気が削がれる」「どこに何を書けばいいか初見では分からない(お医者さんが書く欄と自分が書く欄の区別がつきにくい)」など、ちょっとしたことが大きな壁になっているケースもあります。

休職者の身近に家族や友人がいれば、付き添いで通院したり、書類の書き方を代わりに問い合わせられますが、1人暮らしで引きこもっていたりすると進展がないことも十分あり得るので「書類は書けましたか?」「通院先のお医者さんが書き方を教えてくれたりするから一度、病院に行ってみたらどう?」などの声掛けフォローが必要なケースもあると心しておきましょう。

今すぐやめてほしい!休職中のNGパターン

続いて、意外にやらかす注意点をお伝えします。これは休職者だけの話ではないので絶対に気を付けてください。

①休職者のSNSに注意!休職中に遊びまくっているのが社内にバレたら危険!

よく大問題になるのが「休職者が外出して遊んでいるのを他の従業員が目撃してしまうケース」です。仮に休職者としては復職する気が無かったとしても、遊びに行っている証拠を誰でも閲覧できるSNSで大暴露している休職者がいると、休職者の仕事のフォローに入っているメンバーも次第にストレスが溜まってくることは容易に想像できますよね…。

・休職中、少し体力が回復してきたので、友人が誘ってくれた海外旅行に行った。その写真をInstagramにアップしてしまい、同僚が目撃して社内に言いふらしてしまった。そのことを知らずに復職してしまい、社内の雰囲気がなんか重く感じる、皆の視線が冷たいような気がして結局、退職してしまった。

・Facebookにて、気分転換に行った遊園地や温泉に行ったときの写真を誤って全体公開でアップしてしまっていた。その間、会社の先輩や同僚、後輩にバッチリ目撃されていて、マネージャーにも報告がいってしまい「休職中なので、体調が悪化しないように過ごした方が良いのでは?」と少し怒られてしまった。

・ずっと楽しみにしていた、大好きな歌手のLIVEに行ったら、たまたま先輩たちと鉢合わせしてしまった。見なかったことにされるかと思いきや、LIVE後に追いかけられて「休職しているのにどうしてこんなところにいるの?」と先輩たちに根掘り葉掘り聞かれて超気まずかった…。

などなど、悲しいことが起きるリスクがあります。

ちなみに私は先輩や同僚との繋がりがSNS上では全くなかったものの、休職中はSNSをほぼ更新しませんでした。休職したことを仲が良い人や学生時代にお世話になっていた教授に伝えたくらいです。(その後、母校の恩師がキャリア相談や人生相談に乗ってくれたり、メンタルケアの基本を教えてくれました。)

休職中にリフレッシュしたり、息抜きに遊びに行くは決して悪くないと思います。休職者のご家族も良かれと思って家族旅行を企画したり、友人からお誘いを受けることもあると思います。休職中だからといって遊びに行くなとも言えないので難しいですが、会社側は「SNSには気を付けてね」というお願いの書面を渡しておくと良いでしょう。

ただ「わざと診断書をもらい、わざと休職して遊んでいる」など、制度を悪用する人がいれば、そこは咎めましょう。

②時と場合によっては「お見舞いメールや手紙を送らないで!」と案内しておこう

これもよく事故ります。事故で怪我をした人に対してなら、お見舞いのメールや手紙を書いても問題はない時もありますが、精神疾患などの心の病で休んでいる人には安易にお見舞いメールや手紙を先輩や同僚、同期、後輩が送らない方が良いケースもあり得ます。

実際、私が休職したとき、送り主不明の手紙が荷物に同封されていたことがあり、そこには「頑張ってね!」と書かれていました。うつ状態で休んでいる私にとって、この言葉は悪い方向にしかはたらきかけず「これ以上どう頑張れって言うんだぁああああ!」と怒り狂って体調が一気に悪くなりました。当時のマネージャーにも、このことをフィードバックし、体調が悪くなるようなことをしてしまって申し訳ございませんでした、と謝罪されました。

このように、休職者の体調やメンタルによっては受け止められない言葉も多々あるので、手紙を送りたいと社内から申し出があったら、手紙の内容を検閲するか、一切お見舞いメールや手紙を禁ずる、と案内しましょう。以下の文言、フレーズは禁句だと肝に銘じておいてください。

=絶対に休職者に言わない方が良い言葉=
【早く元気になってね!】
→なるべく早く復帰してね!というプレッシャーにしかならないのでNG
【ガンバレ!応援しているからね!】
→頑張りすぎて休んでいるのに頑張れってどういうこと?と思われる可能性が大
【何かできることある?】
→あまり他人のお世話になりたくないと感じる人もいます。分からないし、もうほっといてくれ!と言われてしまうかもしれないのでNG
【あんなに元気だったじゃん?!本当に鬱なの?】
→疑う時点で人を理解しようとしてなさすぎます、絶対にNG
【そんなの大したことないことじゃん!気にしなきゃ良いのに!】
→何で気にするかを分かろうとしない、共感しないスタンスで接するのはやめましょう
【〇〇さんの仕事は全部、わたしたちがやっておくから心配しないでね!】
→復職後に自分の居場所がないように感じさせるのでNG
【休んで強くなって帰ってくることを祈ってるよ!】
→弱くて悪かったなぁ…と号泣もしくは激高する人もいるのでNG
【無理しないでください】
→現時点でもう無理を通り越してますけど?と思ってしまう人もいるのでNG
【自分を信じて!】
→ひどいときは何も信じられないので、信じる信じない系はNG


などです。気を抜くと絶対に言ってしまいそうな言葉の数々だと思いませんか?

社内の従業員は、社内のメンバーとのコミュニケーションの方法は知っていたとしても、休職者への接し方が分からない、知らないケースがほとんどです。言ってはいけない言葉を悪気なく言ってしまいかねないので、仲が良かった従業員から申し出があった際は丁重にお断りするか、手紙の内容に問題がないか一度開封して読み直しましょう。

また、休職中の従業員とバッタリ会う可能性があったり、休職者と仲が良くてお見舞いに生きたいと申し出る従業員がいるケースも想定できます。その場合は休職者との希望をまず確認しておいて、接点があっても問題なさそうかを判断し、指示を出しましょう。

休職中の従業員対応あるある!人事必見のQ&Aコーナー

次に休職の手続きや従業員の対応方法でよく迷うポイントについて解説します。

①休職しても社会保険料は納めなければならない

結論、休職中の従業員に対しても社会保険料は発生します。つまり会社も従業員も社会保険料を支払わなければなりません。

多くの企業であり得ることですが、休職すると基本的に休職者は無給になり、長期間休む場合は傷病手当金を申請し、その支給額で通院生活などをしていくことになります。基本的には傷病手当金で支給された金額と従業員の貯金から社会保険料を支払ってもらうことになるでしょう。(実際、私も休職中は毎月、社会保険料を納めていました。)

が、社会保険料は数万円以上するので従業員が支払えないと申し出る場合もあります。義理人情で会社が社会保険料を立て替えても問題はありませんが、休職中の従業員がそのまま退職してしまうと会社が立て替え損してしまうリスクもあります。

こうなっては遅いので、できるだけ早く就業規則を最新版に改訂し、休職中の社会保険料の支払いルールも制定しておきましょう!こういった決めごとの相談は社労士さんにするのがオススメです!

ちなみに休職中は勤務していないので雇用保険料と所得税は発生しません。住民税は休職者自身が納めるものなので、会社が支払う義務はありません。

②休職中に健康診断を受けた方が良いのかは法律上、決まっていない

1年もしくは半年に1回、健康診断を受けさせるのは会社の義務ではあるものの、休職中の人も受けた方が良いのかというのは、実は法律上で明確な規定はないとされています。

通院できるほどの体力や気力があれば健康診断の案内を送付して受けてもらうようにするのが良い場合もあれば、心身の具合が悪いのに無理して健康診断を受けさせるのはあまりよろしくない場合もあります。

最善策は「休職中は健康診断を受けずにしっかり休み、復職後にすみやかに健康診断を実施すること」だと言われています。「1年以内に、半年以内に」という健康診断の実施スパンはありますが、休職中は例外であると把握しておきましょう。

そもそも休職者を出さないように日々コミュニケーションすることが一番大事!

正直だれも「自分はいつか休職するだろう」と想像、想定した上で就職、転職することはないとは思います。が、それゆえに本人も会社も予想外のタイミングで起こり得るのが休職です。

元々、体育会系に見えて明るく元気な子という印象を持たれていた私も、社会人になって正直いろいろありすぎて初めてメンタルをやられて、過労にもつながり休職してしまいました。ぶっちゃけ休職する前に産業医と面談があったり、マネージャーとの面談もあったので、私は休職するフラグがビンビンに立っていました。そうなる前にケアできることもあったかもしれません。

  • 採用面接の時点で現場の過酷さ、大変さも求職者に伝えていますか?会社や仕事の良いことだけ話してませんか?
  • 部下やメンバーの不調に気づいているのに、本人と話をしたことがありますか?
  • 人事異動や配置転換で適性に応じたポジションの仕事をさせるなど、配慮しましたか?
  • 教育や研修に時間とコストをかけたことがありますか?ストレス耐性を強化できる研修やプログラムを導入できないか検討したことがありますか?
  • 定期的にストレスチェックや社内アンケートを実施し、本音を話してもらえる機会を設けましたか?
  • 休日はどんな風に過ごしているかなど、雑談できる人が周りにいるのか把握してますか?
  • 全体的に勤務時間が長い体質になっていませんか?隠れて土日祝日に仕事をしているメンバーがいるかもと気にかけたことはありますか?

現在はコロナ禍で飲食店に気軽に飲み会には行かない方が賢明な判断と言えますが、オンライン上でもコミュニケーションできる場面はつくれるはずです。それでもあまり本音をいってもらえないとなれば、社内での信頼関係を上手く築けないという課題が従業員同士の中にある証拠ではないでしょうか。

お金をかけて研修や教育するのが難しい場合でも、お互いがメンバーを気にかけることはお金をそこまでかけなくてもできるはずです。

誰だって笑顔の裏に涙や怒り、不満や悩みがあるでしょう。そこに気づける従業員や人事、経営者が増えますようにと切に願っています。

ちなみに…

コロナ関係なしに離職率や休職率が高くなってきたなぁ…など、雇用や採用の件でお悩みを抱えている方は、求人採用から会社のブランディングまでトータルでサポートできるインビジョンまで、お気軽に相談ください。

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