【下手すりゃ損害賠償】近年のハラスメント事情と留意点を解説!

こんにちは、現役上場企業人事/社会保険労務士 助太刀屋のりょうたです。

最近はひと昔前に比べて、女性の社会進出や活躍促進などのニュースや議論が盛んにされてきているように思います。実際に会社の中にいても、女性の管理職比率や採用数、離職数などどうなっているのかなど色々な側面から話題にあがることが多くなってきていると実感します。

また、ビジネスにおいてはグローバル化が進んでいることもあり「多様性」という名のもとに「性別」「国籍」「信教」「言語」など色々な事に気を付けながら、会社も個人も振る舞うことが重視される時代に来ていると思います。

そのような状況の中、仕事においては、これだけ多種多様な事情が絡むとやはり問題というのも少なからず発生し、特に昨今では「◎◎ハラスメント」などを聞かない日はないくらいになっているのではないでしょうか。

日々の生活をしているだけでも「それ、◎◎ハラだよ」などの言葉も聞かれるようになり、会社生活をしていても、いつそのような指摘を受けるのか怖いなどと話す管理職も増えているようです。

某有名TVドラマのワンシーンであった「バカとブスこそ、◎◎へ行けー!」などもドラマ内だからこそ許容されるものであって、日常生活でそのまま発言してしまった日には、即レッドカードになるものと考えておいたほうがいいでしょう。

この記事はこんな人にオススメです!
・○○ハラスメントで訴えられないようにしたい
・ハラスメントと見られるような行動が何かを知っておきたい

ハラスメントに関する法律について

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既に多くの方が認識されているとは思いますが、会社の中でのハラスメントの代表といえば、セクシュアルハラスメント(以下、セクハラ)とパワーハラスメント(以下、パワハラ)があげられると思います。

また、一部妊娠や出産を契機として、女性に対するマタニティハラスメント(以下、マタハラ)や男性に対するパタニティハラスメント(以下、パタハラ)などもよく聞かれます。

既に「セクハラ」については、男女雇用機会均等法にて定義されており、「マタハラ」「パタハラ」については、男女雇用機会均等法と育児介護休業法にて定義されております。

そして、2020年6月(中小企業は2022年4月)から「パワハラ」についても、労働施策総合推進法(通称パワハラ防止法)にて定義され対策が義務化されました。

主要なハラスメントについて法整備も進んでおりますので、これを機にハラスメントに対する意識や対応策などを見直しておくことが急務になると思います。

ハラスメントの現状と人事目線での注意点

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「職場のハラスメントに関する実態調査 令和2年(調査対象:全国の 20~64 歳の男女労働者 8,000 名)」によれば、ハラスメントを受けた経験についてパワハラ、セクハラおよび顧客等からの著しい迷惑行為について、過去3年間での勤務先で各ハラスメントを一度以上経験した者の割合は下記の通りになっているようです。

  • パワハラ 31.4%
  • 顧客等からの著しい迷惑行為 15.0%
  • セクハラ 10.2%

「パワハラ」は業務上での線引きがかなり難しいので、上司としては「指導の範疇」であっても、部下からは「威圧的な言動」と取られるなど温度感が正直つかめないこともありますので指導の仕方、言い方などには十分注意すべきかと思います。

一方で数値としては、低く見える「セクハラ」については時代の流れもありやや減少傾向とはいえ、人事目線で言えば、一番注意すべき部分はこの「セクハラ」になると考えます。

もちろん程度の差はありますが、世の中で問題になり罰が重いのは「パワハラ」よりも「セクハラ」で場合によっては、懲戒解雇レベルの事件も多発しております。

これは考え方にもよりますが、「パワハラ」は先述したように業務の中で現れやすい特性があるため、どうしてもその境界線が第3者から見ても、「パワハラ」に該当するか、わかりづらいということもあると思います。
一方で「セクハラ」については、一部の業界・業種を除き、前提として業務に関係ない性的な言動などは必要ない。という考え方に基づき、また度を超えた場合には犯罪にもなりかねないという要素もあるためと考えます。「セクハラ」については「まず不要な発言などをしない、させない」を徹底することで防げる事も多々あるでしょう。

裁判例から見るハラスメントの境界線

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これまで法令や昨今の現状に触れてきた中で「セクハラ」については、あからさまな性的言動、不必要な身体的接触、猥褻行為などは基本NGであるという認識が持てると思います。

実際に過去多くの裁判を見ても、上記に当たるような行為には厳しい処分がされてもやむを得ないという判断がされています。

その一方で、日常生活で見られるなんともないような言動がハラスメントに発展するケースや被害者側が過剰に騒いで大きな問題になったケースなどもあります。起りうる事を実際にあった「セクハラ」の事例(裁判例)などをもとに少し考察を入れていきたいと思います。

ハラスメントは常に身近に潜んでいる…!

【Y社事件】※事件番号:平成31年(ワ)第6165号(裁判日令和2年3月27日)

こちらは、最近判決があった事例であり、普段の会社生活の中でも大いに見られる光景の一部になると思います。

◆概要

端的にまとめると、職場で女性に対し発した些細な言動がセクハラと捉えられ、相手の女性に謝罪をしたものの、その後自身の発言がセクハラとなる根拠などの詳細を会社に求めたが、思ったような解が得られず、それらを理由に結果的に体調不良となり鬱病を発症し、3年間の休職をするも回復できずに退職となったため、一連の会社対応や調査が不十分だと訴えたものの、会社の対応は適切にされていたとされ敗訴となった事案です。

セクハラをした(疑われた)本人が鬱病になり、会社と争うというかなり近年では珍しい事例です。

◆経緯

  • 仕事中、男性社員が隣にいる女性社員(49歳・未婚)にいわゆる女性系の時事ネタ話を振った
  • 女性は「なんで、それを(未婚の)私にするの?」と気分を害してセクハラ申告
  • 人事から男性は調査を受けて(悪気はなかったが)謝罪はする。と行為を認めて始末書提出
  • 一旦は女性も謝罪を受け入れて落着
  • その後、男性がセクハラ根拠は?など納得いかない話を会社にした
  • 会社から再調査もあることを確認されたが対応に納得がいかない話をした
  • その後、女性は他部門へ異動(それまでに両者間でトラブルは発生していない)
  • 男性は、いわゆる「腹いせセクハラだ!」とくってかかり会社に直訴
  • 会社からはきちんと調査も行ったうえで不利益はないと回答
  • 男性はそれを基因にうつ病(休職3年)となり、その後復帰できず自然退職で終了
  • 男性は地位確認請求と会社が適切な対応をしていないと訴訟
  • 会社はやるべきことはやったと解され、敗訴。

◆考察

女性に謝罪をして一度は落ち着いたものの、納得がいかず結果的に鬱病となり退職となった原因を会社と争った点はさておき、この事例でそもそもセクハラの発端となった原因が非常に気になりますので少し深掘りをしていきたいと思います。

ハラスメントの争点は、先述した経緯の冒頭部分にある箇所です。

「仕事中、男性社員が隣にいる女性社員(49歳・未婚)にいわゆる女性系の時事ネタ話を振った」

当時、東京都議会にて女性議員が議会での質疑応答中に男性議員から「自分が早く結婚したらいいじゃないか!」とヤジがあった問題がありました。

その発言を受けて、男性社員が女性社員に対して「都議会であのような問題が起きたけれど、ああいう事言うのはまずいよね」と告げたことがすべてのキッカケになったのです。

この女性社員が「(49歳)未婚で子供がいない自分を名指しして発言した」と受け止めて、結果的に不快な感情を抱いたというものです。

この相手が、仮に25歳のまだ入社したばかりの女性であったなら、このような結果にはおそらくならなかったと個人的には思います。この事例からは、たとえ第3者の発言などをもとにした世間話であっても、直接・間接問わず、相手の捉え方次第で如何様にもなってしまうという恐ろしさがあるということです。

もちろん、この男女の間に長年の付き合いや信頼関係があれば、また変わっていたと思いますが、仕事上の会話程度の間柄であったことが、さらに悪い方向にいってしまったと考えられます。

ハラスメントは「受け手がすべて」と言われる由縁ではないでしょうか。ベタベタなセクハラ事例とは異なるものですが、1つの例として捉えておいていただけますと幸いです。

続いてもう1つの事例を見て行きたいと思います。

受け手側の過剰な反応によるハラスメント事例もあった

【P事件】 ※東京地判平24・10・26LEX/DB25483355 東京地判平25・11・12判タ1418 号252頁

世界的にも有名なラグジュアリーブランドのハラスメント事例です。当時世間をかなりざわつかせたため、記憶にある方もいらっしゃるかもしれません。

◆概要

人事本部長が、シニアリテールマネージャー(店舗統括マネージャー)である原告女性に対しセクハラ発言をしたとして損害賠償を求めた事案。

◆経緯

問題となったとされる人事本部長の発言は・・・

  1. 他のブランドとわかるような服は着ずに、自社らしい恰好をしろ
  2. ブランドイメージにあった髪形をしろ
  3. 痩せる努力をしろ

というように、文面だけ見ると即ハラスメント。といいたくなる要素は満載ですが、実際の裁判で出された見解はそれぞれに対して下記のようになっています。

  1. 毎シーズン70万円(年間140万円)の衣装手当が支給される労働契約になっている中で複数回他のブランド品を身に付けて店舗に出勤することを注意するのは妥当(=社会通念上不相当ではない)
  2. 店舗従業員には、服装、ヘアスタイル等のガイドラインがあり、店舗従業員の服装指導業務等を行う立場の者が、業務において髪を含めて配慮の行き届いた身なりが必要と注意することは妥当(=社会通念上不相当ではない)
  3. 体形に係る部分については、業務と直接関係があるとは言い難く一般的にはそのようなことを従業員に伝える必要が生じる場面は想定し難く、配慮を欠いたことは否定できないが、他の経緯を考えれば精神的損害(慰謝料)を発生させるほどとは認められない(=違法性まではないがややグレー)

結論、発せられた言葉の背景には、原告女性側にもそれなりの問題行動が既にあったという解釈です。

これだけであれば、ちょっとしたハラスメント発言疑惑として社内で終わったはずですが、この原告女性は、下記の内容を外部に情報提供し、結果としてその内容がジャパンタイムズの記事として採用され、原告の実名を挙げて報道されました。

  1. 社長が「年をとっている、太っている、醜い、不細工」などとして約15人の女性店長と副店長を排除するよう指示したと発言
  2. 店舗スタッフが自費でハンドバッグの購入を強制されていると発言
  3. 社長が原告に対し「髪型を変え、やせることを求めている」と発言

この流れがあったため、会社は女性に対して懲戒解雇をして争ったのですが、結果としては「会社の信用、体面を傷つけることは明らかであり、自己の立場を有利にするため世論を味方に付けようという目的であったとし、原告の情報提供には根幹的な部分で真実性ないし真実と信ずるにつき相当な理由が認められない」として懲戒解雇が支持されたというものです。

さらに、会社から名誉毀損などで数百万円の損害賠償まで命じられてしまいました。

◆考察

管理職の方や部下を持つ方については、このご時世ですから、いつハラスメントと言われるのか不安だ……など思われる部分も多々あると思います。その中で、この事例については、受け手側が事実に反する内容で過剰に反応した結果、逆に会社から罰を受けた珍しいケースであることは申し上げるまでもありません。

もちろん、ハラスメント行為は許されるものではないですし、日々のコミュニケーションの取り方にも十分注意をしておくこと必要はありますが、労使関係はあくまでも対等であるべきですし、労働者が騒いだらビクビクして、何でも引き下がってしまうというのは会社として違うと思います。

P事件のように徹底的に叩くことの是非はともかくとしても、適切な判断と対応を会社側でも出来るよう常に準備をしておくことも大事ではないでしょうか。

結論、日頃からハラスメントがない体制を整備しましょう

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2つの実際に起こった事例などを御覧になられてどのように感じましたでしょうか。

改めて人間関係の重要性とともに、受け取られ方によってここまで発展してしまうのかという事例。一方で、受けていない行為を過剰に騒ぎたてたことにより、結果として会社から罰を受けてしまう事例。

どちらも現実社会において、身近に潜む要素は併せ持っている内容だと思います。

管理職の方が「怖くて何も言えないよ……」などと呟くことも理解はできますが、相手との関係性はもとより、言い方、接し方などを工夫するだけでもリスクは回避できると思います。

また、企業としても大きな問題に発展する前に、管理職向けへのハラスメント研修や社内相談窓口の設置などの体制を整備しておき、日ごろからハラスメントをさせない、起こさないという認識を持たせることが肝要と思います。

今のご時世では、会社側も適切な対応を取っていなかったと問われるケースもあり何かあっても知らぬ存ぜぬでは通用しない風潮になってきています。

会社と個人の双方でハラスメントに対して強い意識を持って運営をしていくことが、健全な職場環境を構築していく一番の近道なのではないかと感じます。

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