現役社労士が解説!完全週休2日制と週休2日制の違い。休日数と労働時間について

こんにちは、現役上場企業人事/社会保険労務士 助太刀屋のりょうたです。

「24時間戦えますか?」というCMが流れてから何年くらい経過するのでしょうか?
「ワークライフバランス」という言葉が叫ばれてから何年くらい経過するのでしょうか?

「ワークライフバランス」とはその名のとおり「ワーク(仕事)」と「ライフ(生活)」のバランスを取ることであり「仕事」と「生活」のどちらかを犠牲にして頑張ります、というものではなく「生活と仕事を両立すること」によって得られる相乗効果を指すものです。

元々言葉の発祥は1980年代のアメリカでIT技術の進歩とともに女性のビジネス進出から考えられたようですが、日本で叫ばれはじめたのは、1990年代くらいからでしょうか。

今では「ワークライフバランスを重視して働きたいです」という主張も当たり前の光景になっていますし、働き方改革なども促進されているので「24時間戦え(働け)ますか?」というような発言は、もはやパワハラ路線にも見えてしまうくらい世の中は変わってきています。

しっかり休んで、しっかり働く。こういう風潮にはもう逆らえないでしょうね。

今回は、働き方にも関連する「休日」、特に休日数など実務的な面について見ていきたいと思います。

この記事はこんな人にオススメです!
・完全週休2日制と週休2日制の違いについて知りたい
・労働時間と休日の考え方を正しく理解したい

労働時間と休日の変遷

実務的な面の解説をする前に、少し労働時間や休日について、過去から現代までの変遷にも触れておきたいと思いますが、今のご時世、企業の求人情報で下記のようなものはありますでしょうか?

「1日8時間、週48時間労働!」
「週6日勤務で休日は毎週日曜日のみ!」
「とにかく働ける方募集!」

もう当たり前のように認識されていますが、現在は労働基準法にもとづき原則として「1日8時間、週40時間」が限度となっており、休日についても「毎週少なくとも1回又は4週間を通じ4日以上与えなければならない」ということになっています。

もちろん今の法制度の中での求人内容としてはNGですが、ひと昔前までは、この求人も許容されていました。その理由として、労働基準法は戦後の1947年(昭和22年)に制定されましたが、当時は「1日8時間、週48時間」からスタートし、1987年(昭和62年)の改正までは40年間ずっとこのような働き方が合法的なものだったからです。

その後、法改正とともに段階的な労働時間削減が行われ、一部の業種を除き、1993年(平成5年)に現在の「1日8時間、週40時間」という形になった背景があります。いわゆる、戦後復興期、高度経済成長期、バブル期などは絶対的な労働量に支えられていたという事実は拭えないと思います。

労働時間と休日数の関係

労働時間と休日について過去からの移り変わりは理解できたと思います。

現在では当たり前のように「年間休日数120日以上」などという求人が多く出ておりますが、休日数というのは労働時間と常に隣り合わせになっているものであるため、一概に120日以上確保しなければいけない、というものではありません。

採用活動をするときも、他社と足並みを揃えるようになんとなく120日以上設定しておけば大丈夫だろう。という概念などが先行しているケースが多く見受けられますが、あくまでも法律の範囲内であれば、企業は自由に設計することができます。

この辺りについて、実務的な面から理解できるよう触れていきたいと思います。

先述したとおり労働基準法では「1日8時間、週40時間」の労働時間となっており、休日についても「毎週少なくとも1回又は4週間を通じ4日以上」という枠組みになっています。ここでは変形労働制など一部特殊なケースを除き原則論で進めますが、上記を守っていれば結果的に休日数が他社より少なくなったとしても違法にはなりません。

1日8時間労働であれば、週休2日を守って年間105日の休日を設定しておけば大丈夫など、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

これは、上記の法的な枠組みの中での限度の数値から算出されるものです。

ただし、これはあくまでも1日8時間労働という前提でのお話ですので、1日の労働時間を8時間未満にすることにより、年間休日数は105日よりもっと少ない日数で運用することも可能です。

(下表参照)

 労働時間/日労働日数/年労働時間/年休日/年
8.02602,080105
7.52782,08587
7.02972,07968
6.53132,03552

図表の①から④まで30分刻みで1日の労働時間を組み立てた場合、6.5時間まで短縮すると年間休日数は52日までの範囲で設定が理論上できることとなります。

現実的にここまでの日数設定で事業運営をするかどうかは別としても、こうした枠組みの中で設定できることは適切に理解しておくとよいでしょう。

なお、1年は52週となっていることから、これ以上1日の労働時間を減らしたとしても1週1休という原則を守る必要があるため年間52日以下の休日数の設定はできないこととなります。

業種によっては、「なるべく稼働日を多く取りたい」、「起業して間もない時期で人員が確保できるようになるまで最少のリソースで現場を回したい」など、状況に応じて日数を設定することもできますので、ある程度柔軟さは持っておいたほうがいいでしょう。

「完全週休2日制」と「週休2日制」の違い

せっかく休日数の設定について、お話が出てきたので少し派生して現実的な部分にも絡み、よく知っているようで実は明確に異なる言葉の違いにも触れておきましょう。

求人票を作成するとき、また面接で「貴社の休日はどのようになっていますか?」など聞かれるときがあると思います。その時に出てくる「完全週休2日制」と「週休2日制」ですが、明確に違いを理解していますでしょうか。

これは労働者側も適切に理解しておくべきことではありますが、雇用する側も同様に理解しておくべきことですので不要なトラブルを避けるためにも抑えておきましょう。

面接時に「うちは完全週休2日制だからね!きちんと休めるよ!」などといっておいて、入社してみたら、最終土曜のみ出勤であること、祝日のある週は土日どちらか出勤になること、など当初言っていたことと違うじゃないか、と揉めないようにしておく必要があります。

完全週休2日制

「完全」という言葉があるように、1年を通して毎週2日の休日があることをいいます。そのため隔週で土曜が休みになるケースや月末の土曜日のみ出勤などとしている場合は「完全週休2日制」とはなりません。

下記のような休日設定の場合はそれぞれ表記が異なることとなります。

  1. 毎週土曜と日曜が必ず休みになる場合(ホワイトカラー職など)
    → 「完全週休2日制(土・日)」
  2. 毎週火曜と水曜が必ず休みになる場合(不動産業界など)
    → 「完全週休2日制(火・水)」
  3. 毎週日曜と他の曜日1日が必ず休みになる場合(日曜固定休みの業界など)
    → 「完全週休2日制(日・他1日)」
  4. シフトに応じて必ず毎週2日間が必ず休みになる場合(シフト制の販売業など)
    → 「完全週休2日制(シフト制)」

最近の世の中では、土曜日・日曜日・祝日のすべてを休日にしているケースがあります。この場合は「完全週休2日制(土・日)、祝日」となりますのでご注意ください。

なお「完全週休2日制(土・日・祝)」と記載している場合は、祝日のある週は土曜と日曜のどちらかと祝日が休みとなりますので、結果的に土曜と日曜のどちらかは出社となる表記となります。

微妙な違いではありますが、ニュアンスは全く異なりますので改めてご認識ください。

週休2日制

完全週休2日制の説明から入るとイメージしやすいと思いますが、週休2日制とは、1年を通して月に1回以上2日の休みがある週があり、その他の週は1日以上の休みがあることをいいます。

たとえば、毎週日曜と第2・第4土曜が休みとなる場合や1年のうち奇数月の第3土曜だけ出社する場合などを指します。

そのため、下記のような休日設定の場合はそれぞれ表記が異なることとなります。

  1. 毎週日曜と第2・第4土曜が必ず休みになる場合
    → 週休2日制(日、第2・第4土曜)
  2. 毎週火曜と第2水曜が必ず休みになる場合
    → 週休2日制(火、第2水曜)
  3. 毎週土曜と日曜が休みであるが、年に6回土曜出社日がある場合
    → 週休2日制(土・日 ※年6回土曜出社日あり)

なお、飲食業やアパレル業などは店舗稼働日にあわせてシフトを決められるケースが多いです。そのため、月に1回以上2日休める週があり、他週は1日以上の休みが確定している場合には「週休2日制(月●日シフト制)」などと記載することとなります。

2つの違いについては、理解できましたでしょうか。普段から人事に携わっている方でもきちんと理解し、使い分けをしているケースは意外と少ないので、これを機に採用活動とあわせて見直しの一助となれば幸いです。

さいごに

休日というものは、労働者が働くにあたって重要な要素であることは申し上げるまでもありませんが、休日ありきではなく、事業ありきで会社側は適切な設計と運用をしていくことも忘れないようにしましょう。

冒頭で触れました1980年後半に流れていた某栄養ドリンクのCM内で「24時間戦えますか?!」というものは、今では半ば時代遅れになってはいるものの、CM内では「サラリーマン」というワードではなく「ビジネスマン」という表現をしている部分が興味深いですね。

どちらも和製英語なので本来の意味とは異なるのかもしれないのですが「サラリーマン」は「会社から給料を貰って与えられた仕事をこなす人」という意味で「ビジネスマン」は「会社の売上に貢献する為にやり甲斐を持って働く人」という意味合いになると思います。

休日を確保することは大事ですし、労働時間は今後も減っていくものかもしれないですが、休日や労働時間の概念とは別に自身の働き方については、いつまでも「ビジネスマン」サイドでありたいと思うことは変わりません。

ワークライフバランスを考えることは大切なことですが、一方では、お金をもらうから働くのか、はたまた働いた見返りとしてお金をもらうのか、どちらが尊重されるべきかを休日や労働時間とは別の視点で考え直してみるのも、また興味深いものではないでしょうか。

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※参考資料

労働時間法制の主な改正経緯について

栄養ドリンクCM 

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